2024.02.13

【導入事例】名古屋市立大学大学院医学研究科 細野先生

実績が豊富なだけでなく、対応や体制がしっかりしており、
熱意も感じたので、安心してAIアプリの開発を任せられると判断しました

ニュートラルでは、名古屋市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学分野 研究員 細野 晃弘氏の依頼を受け、乳幼児を引き起こす動画をAIで解析。「首のすわり」を判定する「引き起こし判定アプリ」(定頸診断装置およびプログラム)の開発を担当しました。「引き起こし判定アプリ」の発明者である細野氏に、開発の経緯やニュートラルに開発を依頼した理由などについて詳しく話を伺いました。

●お話を伺った方
細野 晃弘氏
名古屋市名東保健センター 所長
名古屋市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学分野 研究員・非常勤講師

医師。平成14年、名古屋市立大学医学部医学科卒業。
名古屋市立大学病院小児科研修医、名古屋市立大学大学院医学研究科健康増進・予防医学分野(現・公衆衛生学分野)大学院生を経て、名古屋市の保健所勤務医となる。
その後平成25年から5年間、母校である名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野助教として勤務した後、平成30年、名古屋市に再度入職した。熱田保健センター所長を経て現職に至る。社会医学系専門医・指導医。

■乳幼児の「首のすわり」をAI診断する「引き起こし判定アプリ」

–「引き起こし判定アプリ」についてご紹介ください。

「引き起こし判定アプリ」は、乳幼児の「首のすわり」を判定する診断装置およびプログラムです。
「首がすわる」とは、乳幼児が自身の首をコントロールして、思うように動かすことができる状態を示します。医学用語では「定頸(ていけい)」と呼ばれ、だいたい生後3~4か月に完了し、乳児の発達の度合いを示す重要な指標の1つとなります。

「首のすわり」を判定するためのひとつの方法が、乳幼児の両手を持ってゆっくり引き起こすときに、首がどう動くのかを見ることです。「引き起こし判定アプリ」は、この「乳幼児の両手を持ってゆっくり引き起こす」動作を撮影した動画を画像解析して、「首のすわり」が完了しているかどうかをAI判断します。

なお、「引き起こし判定アプリ」は、細野晃弘を発明者として特許権を取得していますが、プログラムの作成はニュートラルに依頼しています。

▽首が座っている状態(乳児検出枠が緑色に変化)

▽首が座っていない状態(乳児検出枠の色緑にならない)

■目指したのは定頚診断の基準判定機

— 「引き起こし判定アプリ」を開発した背景を教えてください。

引き起こし反射の診断は多様な基準が存在し、標準化された指標がなく健診の現場では医師の個人的技能に依存して診断が行われています。そこで定頸診断の基準判定機のようなものがあれば、と診断技術習得に苦慮していた研修医時代以来、ずっと考えていたのですが、AIによる画像解析技術を使ったら作れないだろうかと思いついたのがきっかけです。このプログラムで、個人的な技能に依存することなく、客観的な基準に基づいて判断ができるので、研修医に対する診断トレーニングの効率化を図ることができるのではないかと考えました。

さらに基準判定機となる「引き起こし判定アプリ」の利用が広まれば、医師不足や偏在により小児科医の確保が困難となりつつある状況において、たとえば専門の医師でなくとも正確な判断ができて未定頸児の確実なフォローアップ体制の構築に繋がるなど、遠隔医療や在宅医療のニーズへの対応を促進することが可能になり、乳幼児自身や親御さんの負担軽減にも貢献できると考えました。

一方、AIによる機械学習や深層学習などの技術が急速に発展し、多方面への適用が試みられています。疫学研究や医学論文解析など医療への応用も始まっており、機械学習を医療分野へ適用する技術を乳幼児の健康や公衆衛生に活用することで、医療の質の向上に貢献するとともに、AI技術を応用した新しい診断システムの開発に挑戦したいという考えもありました。

■プログラム開発の実績と体制、そして熱意を評価

— 細野様自身は、これまでアプリ(プログラム)の開発やAIの画像解析に関する経験やノウハウはお持ちだったのでしょうか。

私自身は、医学や公衆衛生の分野においての知識や経験はありますが、プログラムの開発やAIに関する知識や経験は持ち合わせておりません。正直なところ「引き起こし判定アプリ」の開発においても、技術的な裏付けを持っていたわけではなく、「AI技術を使った画像解析プログラムを作れば、判断ができるだろう」くらいの発想からスタートして、相談をしながら開発を進めていきました。


— 「引き起こし判定アプリ」の開発をニュートラルに依頼した経緯を教えてください。

ネットのデジタル発注サイトで、「引き起こし判定アプリ」を開発してもらえる会社を募集したところニュートラルを含む数社からのオファーがありました。東京の会社からのオファーもあったのですが、自身が愛知県名古屋市に在住していますので、まずは名古屋の企業2社と直接話をしてみることにしました。

話をしてみると、もう1つの会社は個人経営に近いイメージだったのですが、ニュートラルは最初から営業担当者とエンジニアが真摯に相談に乗ってくれて、対応や組織体制がしっかりしており、熱意も感じました。

また、技術面でもニュートラルは、「乳幼児が寝返りをしてうつ伏せになっているかどうか」を判定するアプリなど、多種多様なシステムを開発した経験と実績があり、画像判定AIにも精通していると思ったので、これ以上の適性のある企業はないと判断しました。

開発費の見積もりも他の会社に比べてリーズナブルであったことから、ニュートラルに開発を依頼することにしました。


— アプリの開発時に苦労したことなどはありませんでしたか。

プログラムとかAIとかに関してはニュートラルに全面的に任せることができたので、私自身が苦労したと思うようなことはほとんどありませんでしたが、開発時期がコロナ禍であったこともあり、AIに学習させる動画素材に関して、当初予定していた数を集めることができないという事態が発生しました。保健センターの乳幼児健診が中止・延期になってしまったのです。結果的に、ニュートラルが動画を静止画に分解して学習させるという提案をしてくれたことで、学習の精度を向上させることができ、とても助かりました。

また、特許を出願するにあたり、弁理士に対してプログラムによる情報処理がどのように実現されるのかについて、詳細な説明をしなければなりませんでしたが、弁理士とのやり取りもニュートラルに対応してもらえたので、スムーズに特許権の取得も進めることができました。


— アプリの開発費はどのようにされたのでしょうか。

公立大学法人名古屋市立大学の学術奨励寄附金による研究費を活用しています。

■世界中の子供の健康と発育に貢献

— 今後の展開予定などあれば教えてください。

「引き起こし判定アプリ」は、現在PC上で稼働するプログラムとなっていますが、より手軽に使ってもらえるようスマートフォンなどで利用できるようにしたいと考えています。さらに、マルチ言語対応を図ることで、世界中で利用してもらえるようにしたいとも考えています。日本のような乳児健診体制が整っている国ばかりではないので、「引き起こし判定アプリ」が世界中の子供の健康と発育に貢献できればうれしく思います。

また、実は私は「首のすわりをトレーニングで早めることができるのか?」を研究したいと思っています。この研究のためには頻繁に「首のすわり」を判断する必要があるのですが、従来であれば難しかったですよね。毎日とか毎週、小児科医が家庭訪問して診察する必要がありますので。こういうわけで、この研究をするのは難しかったのですが、「引き起こし判定アプリ」を利用すれば、こういった新たな研究が進むことにも期待しています。


— ニュートラルに対する評価や期待があれば教えてください。

先進的で、医学的な理解も求められるアプリの開発にもかかわらず、実現したいことを正しく理解して、適切に対応してくれたことに深く感謝しています。学習させるデータの取り方なども明確な指示があり、精度を高めることができました。
コロナウイルスの感染拡大の影響を除けば、予定通りに開発を進めることができ、機能や性能にも満足しており、対応にも不満などは感じることはありませんでした。とても良い開発パートナーに出会えたと思っています。


–これからアプリの開発を検討している方へのアドバイスなどがあればお願いいたします。

アドバイスなどはできませんが、自分の失敗談について話をすると、アプリを開発する過程で発生した基礎データを残していなかった部分があり、論文化する際に苦労した場面もあるので、当たり前のことなのですが、詳細な記録を保存しておくことは改めて重要だと思っています。


— お忙しいところ、貴重な話をお聞かせいただきましてありがとうございました。


※表現上「診断プログラム」と表記していますが、本プログラムは医療機器としての認可は未取得であることをお断りします。
※取材2024年1月

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